友情論(偽)
「レオナとラギーは友達なのか?」
寮長会議が終わったあと、なんとなく聞いてみた。レオナが報酬を支払って、ラギーが従う。でもレオナが間違ってると思えば、ラギーは反論する。よく二人でいて、同じ方向を見ているようにみえる。そこに友情はあるのか、今のオレは知りたかった。
「あぁ……? なんでそんなこと聞くんだ」
レオナはマジフト大会あたりから、少し雰囲気がやわらかくなったようにみえる。なんでもかんでも切り捨てるような態度をとらなくなった気がする。フェアリー・ガラでも一生懸命取り組んで、大成功をおさめることができた。それでオレとも前より仲良くしてくれるようになったと思う。
「ジャミルとちゃんと友達になりたいんだ」
レオナは一瞬なんだか嫌そうな顔をしたが、すぐ少し真面目な顔をして
「俺はラギーとは友達じゃないからな。わからねぇな」
と言った。
「ふーん。そうなのか。いつも一緒で仲がよくても友達じゃないってこともあるんだな。先輩と後輩だからか? オレは年齢が違っても友達でいいと思うけどな。オレとレオナも友達だし」
「いつから俺とお前は友達になったんだ……」
レオナが大きなため息をつく。ちがうのか? とオレが聞いたらそれはどっちでもいいが、と前置きしてレオナが続ける。やっぱりレオナは前より優しくなったと思う。どっちでもいいことをどっちでもいいなんて以前はわざわざ口にしなかった。
「お前、ジャミルとどうなりたいんだ。友達って名前をつけて、それになって、なんの意味があるんだ。お前がジャミルとこれだと思う関係が築けたら、それは友達じゃなくてもいいんじゃないのか。お前の願望は本当に、ジャミルと友達になることなのか」
レオナの言うことはオレには少し難しかった。だけど、俺は友達だと思ってたけどジャミルはそう思っていなかったってことは、オレがジャミルとの関係性につけた友達っていう名前のラベルばかり見て安心していたからかもしれない、とは思った。
「助けられてばっかりじゃなくて助けたい、もっとジャミルが何を考えてるかわかるようになりたい、対等な立場で競いたい……」
オレがどうしたいのか、口に出して言ってみる。
「ちゃんと言えるじゃねぇか」
レオナが笑う。
「それ、俺はラギーに対してひとつも思わないからな。やっぱり参考にはならねぇよ。お前が自分の頭でちゃんと考えてやってくしかないだろ」
レオナの顔が大人びてみえる。そうか、レオナとラギーは全然オレたちとちがうんだな、そう思ったところでふと疑問に思う。さっきレオナがラギーは友達じゃないって言ったときに自分があっさり「納得してしまった」感覚の正体は、なんだったんだ。
「じゃあレオナはラギーのことどう思ってるんだ?」
「さあな、でも」
レオナはすごく優しい顔をしてる。
「簡単に名前はつけられるものじゃないんだよ」
鏡舎でレオナと別れてからも、オレはまだ考えている。レオナが優しくなったこと、二人がいつも一緒にいること、二人とも前より心から笑った顔をするようになったこと……。ジャミルに聞いたらわかるだろうか。なんでもかんでも俺に聞くなと怒られるだろうか。まあわからないままでも構わない。オレは今のあの二人が好きだし、自分のことは自分で考えないといけないからな。
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