【レオラギ】末永くお幸せに
「末永くお幸せに」
文庫/64ページ(表紙等込)/500円(会場頒布価格)/全年齢/レオラギ
レオラギ結婚するんだって!
レオナとラギーの結婚とそれを祝うパーティーをとりまくお話
◇レオナとラギーの話2編
◆他キャラから見た二人についての話3編
の連作短編集です。
◆ パーティーを開こうよ リドルから見た二人
◇ リビングルームでプロポーズ レオナとラギー
◆ 素敵な招待状 マレウスから見た二人(ラギー多め)
◆ かっこいいかっこわるい エペルから見た二人(レオナ多め)
◇ ふたり レオナとラギー
サンプルは各話から序盤を抜粋 細切れなので文体等の参考程度にご確認ください。
・レオナが王籍を抜けてます
・NRCのメンツの性格が柔らかめ
・レオナは家族と絶縁ではないが不仲
・マレウスが招待されることができています
・レオラギ以外のCPなし
・全年齢ですが性行為を匂わす描写、事前事後描写等あり
・結婚制度、習俗や法律等の捏造(ふんわりしている)
・キャラクターの過去や未来の捏造
・個人の妄想を多分に含む二次創作です
「パーティーを開こうよ」
顔を合わせるのは卒業以来であり、頻繁に会ったり連絡をとったりするような親しさでもないが、なぜか三人の在学中多かったハプニングや事件の類を共に乗り越えた間柄でもあり、再会してすぐに当時の空気のまま会話は始まるのだった。
もっとも、今日この席が設けられたのは、再会を懐かしむためではない。
最近レオナとラギーがリドルに託している、ここまでオンラインでやり取りをしてきた「相談事」についての最終確認を、せっかくだから顔をあわせてやろうというのが発端である。
つやつやとした革張りのソファ席に座り、注文を取りに来た給仕にアールグレイティーを頼むと、リドルは本題に入った。
「それで、事務手続きもだいたい終わったんだってね。おめでとう」
「いろいろ相談に乗ってくれて助かったッスよ。自分の国以外の法律なんてちんぷんかんぷんで……」
「お前は自分の国の法律だって別に詳しくはないだろ。俺も自分に縁があるなんて思ってなかったしな。海外移住なんて」
アイスティーを飲みながらレオナはなんてことないように言うが、一国の王子である彼が数年前の臣籍降下に続き、海外へ移住するとなったのだから彼らの母国はそれなりの騒ぎになったのだった。
* * *
「リビングルームでプロポーズ」
籍入れるか、とまるで散歩にでも誘うような温度で向かいに座っているレオナが呟いたので、ダイニングテーブルで特売チラシのチェックをしていたラギーはその意味をすぐに理解し反応することはできなかった。
二人で共に生きていこうと決めたのはもう三年ほど前のこと、そのための方法を二人なりに考えた結果、レオナは臣籍に降りた。
王宮を出る代わりにキングスカラーの姓をそのまま名乗ってほしいと条件をつけたのは国王だった。
王族でなくなっても、これからも兄弟であり続けることの証左だと王は微笑んだが、その権力をつかってまだ悪気なくレオナを縛るつもりかとラギーはあまり面白くはなかった。
後でレオナにそれでいいのかと尋ねたら、お前といられるならなんでもいいと答えた。
実際もう少し窮屈な思いをすることになると思っていたが、驚くほど制約を受けることなく二人での生活を始められたのは王の温情によるものなのだろう。
広大で自然の美しいその国の王の座は、学生生活の中で多くのものを得るうちに、レオナにとってそれほど欲しいものではないように思えてきた。王宮にはレオナにできることはたくさんあったが、それはレオナでなくてもできることだった。
それと反比例するように、手に入れたいものもやりたいことも増えていった。なりたいのは自分に流れる血が証となる母国の王ではなく、もっと手が届きにくい存在としての王だった。
だから、隣にハイエナ一匹付いてきさえすれば、レオナにとって自分が王族ではない世界に踏み出すことはそれほど不自然なことではなかった。
* * *
「素敵な招待状」
「学生時代に付き合い始めてそのまま結婚とは、甘酸っぱくてうらやましいことじゃの」
「リリアは知っていたのか」
「いつからかは知らんけどな。気にかけてかわいがっとったのは知っておる」
声のトーンがちょこっと違うんじゃよお互い、とリリアが頬に手を当てたぶりっこポーズで当時のことを思いやる。
「なんだキングスカラーも水くさいな……。僕は学生時代に恋バナとやらをしたりのろけ話をきいたり、時に喧嘩の相談に乗ったりしたかったぞ」
マレウスはどうも最近読んだ少女漫画に影響を受けている様子だった。
「なんとお優しい! 若様、このセベクの相談に是非のっていただければと!」
「そうか。ラギーが悩んでいるときに、俺は力になってやるべきだったんだな」
マレウス、セベク、シルバーの各々の言い草に、そういうのができるような間柄じゃったっけ? とリリアの頭には疑問符が浮かぶが、当時本人たちの口からそんな話が聞けたならさぞ興味深かったことだろうとは思った。
「はっ」
マレウスが突然声をあげるので、セベクがまたどうされました若様、と大きな声を出す。
「思い出した。キングスカラーはともかくブッチの方とはあまり関わりがなかったと思っていたが、あったな。キングスカラーの話をしたことが」
マレウスの突然の記憶の覚醒に、他三人は目を輝かせた。
「それ聞いてもいい話かの? わし胸きゅんえぴそーどが聞きたい」
「俺も気になる」
「レオナ先輩とラギー先輩に興味はないが、若様のお話は聞きたいです!」
三人の様子にマレウスは顎に手を当てて思案する。
「……胸きゅんえぴそーどかはわからないが、不名誉になるような話ではないし、まあ話しても良いか」
優雅に足を組み替えて、マレウスは学生時代のほんの小さな出来事、招待状がやってこなければ忘れていたささやかな記憶を語り始めた。
* * *
「かっこいいかっこわるい」
あの二人デキてるよなあ、あーニオイでわかるよな、という獣人の先輩たちの会話をきいて、それが誰のことを言ってるのかエペルにはわかってしまったし、わかってしまう自分にも少し苛立ってしまった。
マジフト部の部長とその実質サブポジションにいるエペルの尊敬する二人の先輩――レオナとラギーが、最近そういう意味でのお付き合いを始めたという噂が、鼻のきくサバナクロー生あたりから流れ始めたのは最近のことだ。
(あの二人はそんなんじゃねえ。もっと――)
マジフトのプレイ中、テレパシーでも使ってるみたいにお互いがいてほしい位置にいてそこから得点につなげる二人のコンビネーションのすごさは何度も目の当たりにしている。どうやったらそんな風にできるのかと訊ねる一年生たちに、
「うーん……。カン……ッスかね?」
とラギーは答えて、レオナは少し離れた位置であくびをしていた。
寮長のレオナの能力が高いのは当然のことながら、それについていくラギーもすごいのだとエペルは思う。レオナが適当にやっておけの一言を発してから、ラギーが具体的な練習メニューを指示して、でいいッスかねレオナさん? と聞き、それにああ、とか、おお、とか返事が返ってくるのは様式美といってもいい。
「実質練習メニュー考えてるのはレオナさんッスよ。オレは今日はこんな感じかなーって組み立てて指示してるだけ。違ったらちゃんと訂正入るし、あの人最近は結構やる気あるから」
自主練メニューをどうやって考えたらいいのかを相談したときに、話の流れでそんなことをラギーは話していた。
その時のラギーの表情を、稲穂の波のようだと思ったことをエペルは覚えている。なぜそう感じたのかは忘れてしまったが。
* * *
「ふたり」
「いやーごちそううまかったッスね。さすがアズールくんとこの系列店」
「前から気になってたんだが、お前食ったもの本当にどこかに消えてねえか?」
華奢な腹をレオナが撫でると、ラギーはレオナさんのすけべ、といって身をよじるポーズをとった。
パーティーはあれだけハプニング遭遇率の高かった面子が集まったにも関わらずつつがなく終わり、二人はホテルのクイーンサイズのベッドの上でなんとはなしにごろごろとしながら、じゃれあったり今日撮った写真を眺めたりしていた。
トレイのお手製ウェディングケーキの入刀もお互い特大のスコップでやりあったファーストバイトも楽しかったし、二人で投げたブロッコリートスはあらかじめ魔法を禁止していなかったせいで、奪い合いになり決着がつくまでに十六分ほどかかった。ちなみに最後にちゃっかりゲットしていたのはリリアだった。
久しぶりに会った知人たちは、やはり学生時代と変わらずクセの強い連中だったが、皆あの頃抱えていた何かを晴らしたような空気をまとっていて、一般的に言うなら丸くなった、なんて言い方をするのだろうが丸くなるために削った部分のことを考えると、そういう簡単な表現を使うのはしたくないような気もした。
とにかく意外なほどに、皆祝福してくれた。
結婚の意義も、結婚式の意味も、それほど無くてあくまで自分たちの選択にすぎないと二人は考えていたが、祝福してもらうための場を設けたことは良かったと感じていた。自分たちを大切にしてくれない存在のほうが多かった二人にとっては、その幸せを喜んでくれる人たちがいることに慣れていなくて面食らったが、たまにはこういうのも悪くないなと二人でささやきあった。
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